【第2部】なぜカーリング加工は難しいのか?スプリングバック・超微細・複雑形状――現場技術の最前線
キョーワハーツの坂本留実です。
今回は【第2部】なぜカーリング加工は難しいのか?スプリングバック・超微細・複雑形状――現場技術の最前線というテーマです。
1. 一見単純に思えるカーリング加工の難しさ
カーリング加工は、金属板を丸めて筒状やC型、あるいは特殊な立体形状へと成形する技術です。「板金を丸めるだけ」と思われがちですが、実は設計・材料・金型・加工すべてのノウハウが複雑に絡み合っています。
現代の製品は小型・軽量化が進み、パーツ一つ一つに求められる精度や複雑性はかつてないほど高まっています。そのため、不良や寸法ズレ、新素材への対応など、課題は日増しに高度化し、カーリング加工現場では絶えずチャレンジが求められています。 2. “0.01mmのこだわり”――スプリングバックへの挑戦
カーリング加工の最大の難所は「スプリングバック」と呼ばれる金属独自の現象です。
金属板を曲げたり丸めたりすると、応力が抜ける過程で、材料が「元の形」に戻ろうとする微妙な反発が発生します。この“戻り”によって寸法ズレや形状の変化が起き、品質や組立の誤差を引き起こします。
スプリングバックの規模は、材料や板厚、曲げ半径など加工条件によって大きく異なります。例えば、曲げRが小さくなればなるほど、薄板やばね材ほど反発が激しく、0.01mm単位の制御が必要です。
材料ごとのスプリングバック傾向
〇アルミ系は反発量が比較的小さく扱いやすいですが、反りや皺が出やすいため慎重な工程設計が要ります。
〇鉄・ばね鋼・ステンレス系はバネ性が強く戻りが大きいため、オーバーベンディング(敢えて多めに曲げる補正)が必須です。
〇銅合金・ニッケル系は形状が安定しやすいものの、極薄板や極小径では油や温度管理が要求されます。
設計・材料手配・金型作成・現場試作と各工程で“現物あわせ”が行われ、初めて狙い通りの寸法・品質が実現できるのです。 3. 極小径・極薄板加工と量産安定 ― 現場のリアル
スマートフォン・医療機器・精密計測器などの分野では、板厚0.03~0.06mm、直径0.45mm以下といった超微細部品を扱うことが増えています。しかしこの世界では、例えば0.01mmの加工ズレや送りミスが全数不良になりかねません。
金型のパンチやダイスも極小・極薄化するため、摩耗や折損が増え、 工程の段取りや温度・潤滑管理も極めて重要になります。また、送りトラブルや座屈防止には自動補正装置や高精度搬送機構が不可欠となり、現場ごと細かな工程調整を行っています。
さらに、材料ロットごとに僅かな性質差が出ることもあるため、現場ではそのつど試作と調整、歩留まり改善がくり返されています。 4. 複雑化する形状・構造――多連結・多機能カーリングへの対応
ニーズが多様化する現代においては、単なる円筒型だけではなく、しずく型、メガネ型、多段連結構造、さらにはフランジ付き部品や端子一体型といった高機能カーリング部品の量産が求められています。
これら複雑な形状を1工程で実現するには、多段カムスライドや可変パンチ、複合連動機構など工夫を凝らした金型設計が不可欠です。加えて、金型の摩耗や組立・分解作業の簡易化など、生産現場ならではのメンテナンス性向上も重要ポイントです。
モノづくり現場では、搬送システムや自動検査技術との組み合わせも進んでおり、高精度と効率性の両立が図られています。 5. キョーワハーツの現場力と独自技術
キョーワハーツでは長年培ってきた技術力とチャレンジ精神で、極小径・極薄・複雑形状カーリングを実現し続けています。
〇極小丸め・複合形状:φ0.45mm×t0.12mmの丸めや、板厚0.03mm級バネ、複数穴・メガネ型なども高精度で量産可能。真円度0.03mm以下や同心度0.02mm以下など厳しい公差にも対応。
〇連続工程・一貫生産:抜き・丸め・穴あけ・カシメ形状を多段連結工程で一気に仕上げ、工程内での品質検査も自動で行っています。
〇金型・工程改善:送りミスや座屈を防ぐための自社設計搬送機構や、摩耗対策済みパンチ&ダイス製造、可変カムや自動微調整ギミックも独自開発。少ロットから多品種まで柔軟に対応します。
〇多様な材料:ステンレス、ばね鋼、銅・ニッケル系、コバール、マグネシウムなどの難加工材料にも確実に加工対応しています。 6. お客様の課題をともに解決――現場と設計の“二人三脚”
開発現場では、お客様の「こう作って欲しい」「こんな形状は可能か」「コストダウンしたいが諦めている」など、様々なご要望が寄せられます。
キョーワハーツでは、
図面をもとに設計段階から現場目線でアドバイス
切削品をプレス化など、コストダウン案も積極提案
ラフなポンチ絵・アイデア段階からの相談も歓迎し、必ず試作・現物トライで最適条件を実証していきます。
困難な仕様でも何度もサンプル作成、工程検討、現場での微調整を重ねて目標品質をクリアしています。だからこそ、設計者や調達担当の方も「安心して任せられる」と高く評価いただいています。 7. 進化しつづけるカーリング加工の現場 ― これからの展望
カーリング加工や精密板バネ加工の未来は、技術の継承と革新の積み重ねにかかっています。
今後はさらに
〇IoT・ウェアラブル・次世代医療機器分野へのより微細・複雑形状対応
〇二層・三層複合材や難加工合金への積極挑戦
〇工程の自動化・AI検査など品質保証のイノベーション
などの領域が拡大する見込みです。
キョーワハーツは、素材研究・金型開発・現場技能のすべてを連携させ、ものづくり現場から「ゆるぎない品質」と「新しい社会価値」を創出し続けていきます。
製品事例集もご覧ください
カーリング事例集はこちらから!
最後までお読みいただきありがとうございました!
今回は【第2部】なぜカーリング加工は難しいのか?スプリングバック・超微細・複雑形状――現場技術の最前線というテーマです。
1. 一見単純に思えるカーリング加工の難しさ
カーリング加工は、金属板を丸めて筒状やC型、あるいは特殊な立体形状へと成形する技術です。「板金を丸めるだけ」と思われがちですが、実は設計・材料・金型・加工すべてのノウハウが複雑に絡み合っています。
現代の製品は小型・軽量化が進み、パーツ一つ一つに求められる精度や複雑性はかつてないほど高まっています。そのため、不良や寸法ズレ、新素材への対応など、課題は日増しに高度化し、カーリング加工現場では絶えずチャレンジが求められています。
カーリング加工の最大の難所は「スプリングバック」と呼ばれる金属独自の現象です。
金属板を曲げたり丸めたりすると、応力が抜ける過程で、材料が「元の形」に戻ろうとする微妙な反発が発生します。この“戻り”によって寸法ズレや形状の変化が起き、品質や組立の誤差を引き起こします。
スプリングバックの規模は、材料や板厚、曲げ半径など加工条件によって大きく異なります。例えば、曲げRが小さくなればなるほど、薄板やばね材ほど反発が激しく、0.01mm単位の制御が必要です。
材料ごとのスプリングバック傾向
〇アルミ系は反発量が比較的小さく扱いやすいですが、反りや皺が出やすいため慎重な工程設計が要ります。
〇鉄・ばね鋼・ステンレス系はバネ性が強く戻りが大きいため、オーバーベンディング(敢えて多めに曲げる補正)が必須です。
〇銅合金・ニッケル系は形状が安定しやすいものの、極薄板や極小径では油や温度管理が要求されます。
設計・材料手配・金型作成・現場試作と各工程で“現物あわせ”が行われ、初めて狙い通りの寸法・品質が実現できるのです。
スマートフォン・医療機器・精密計測器などの分野では、板厚0.03~0.06mm、直径0.45mm以下といった超微細部品を扱うことが増えています。しかしこの世界では、例えば0.01mmの加工ズレや送りミスが全数不良になりかねません。
金型のパンチやダイスも極小・極薄化するため、摩耗や折損が増え、 工程の段取りや温度・潤滑管理も極めて重要になります。また、送りトラブルや座屈防止には自動補正装置や高精度搬送機構が不可欠となり、現場ごと細かな工程調整を行っています。
さらに、材料ロットごとに僅かな性質差が出ることもあるため、現場ではそのつど試作と調整、歩留まり改善がくり返されています。
ニーズが多様化する現代においては、単なる円筒型だけではなく、しずく型、メガネ型、多段連結構造、さらにはフランジ付き部品や端子一体型といった高機能カーリング部品の量産が求められています。
これら複雑な形状を1工程で実現するには、多段カムスライドや可変パンチ、複合連動機構など工夫を凝らした金型設計が不可欠です。加えて、金型の摩耗や組立・分解作業の簡易化など、生産現場ならではのメンテナンス性向上も重要ポイントです。
モノづくり現場では、搬送システムや自動検査技術との組み合わせも進んでおり、高精度と効率性の両立が図られています。
キョーワハーツでは長年培ってきた技術力とチャレンジ精神で、極小径・極薄・複雑形状カーリングを実現し続けています。
〇極小丸め・複合形状:φ0.45mm×t0.12mmの丸めや、板厚0.03mm級バネ、複数穴・メガネ型なども高精度で量産可能。真円度0.03mm以下や同心度0.02mm以下など厳しい公差にも対応。
〇連続工程・一貫生産:抜き・丸め・穴あけ・カシメ形状を多段連結工程で一気に仕上げ、工程内での品質検査も自動で行っています。
〇金型・工程改善:送りミスや座屈を防ぐための自社設計搬送機構や、摩耗対策済みパンチ&ダイス製造、可変カムや自動微調整ギミックも独自開発。少ロットから多品種まで柔軟に対応します。
〇多様な材料:ステンレス、ばね鋼、銅・ニッケル系、コバール、マグネシウムなどの難加工材料にも確実に加工対応しています。
開発現場では、お客様の「こう作って欲しい」「こんな形状は可能か」「コストダウンしたいが諦めている」など、様々なご要望が寄せられます。
キョーワハーツでは、
図面をもとに設計段階から現場目線でアドバイス
切削品をプレス化など、コストダウン案も積極提案
ラフなポンチ絵・アイデア段階からの相談も歓迎し、必ず試作・現物トライで最適条件を実証していきます。
困難な仕様でも何度もサンプル作成、工程検討、現場での微調整を重ねて目標品質をクリアしています。だからこそ、設計者や調達担当の方も「安心して任せられる」と高く評価いただいています。
カーリング加工や精密板バネ加工の未来は、技術の継承と革新の積み重ねにかかっています。
今後はさらに
〇IoT・ウェアラブル・次世代医療機器分野へのより微細・複雑形状対応
〇二層・三層複合材や難加工合金への積極挑戦
〇工程の自動化・AI検査など品質保証のイノベーション
などの領域が拡大する見込みです。
キョーワハーツは、素材研究・金型開発・現場技能のすべてを連携させ、ものづくり現場から「ゆるぎない品質」と「新しい社会価値」を創出し続けていきます。
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