技術ブログ 異種金属を組み合わせた製品設計の落とし穴と対策
こんにちは!キョーワハーツの坂本留実です。
技術ブログを開いてくださりありがとうございます!
今回のテーマは…
「異種金属を組み合わせた製品設計の落とし穴と対策」
製品の機能向上や性能アップのために、異なる種類の金属を組み合わせることは珍しくありません。
しかし、その設計には「接合技術」と「接合部の腐食」という重要な考慮点が存在します。
特に後者の「腐食」は、製品寿命や安全性に大きく影響するため、設計段階での十分な配慮が不可欠です。
今回は、異種金属を組み合わせた製品設計で特に注意すべき腐食現象と、その具体的な対策について解説します。
異種金属接触腐食(ガルバニック腐食)
異種金属を組み合わせた製品で最も頻繁に問題となるのが、異種金属接触腐食です。これは、異なる金属同士が水(電解質)の存在下で接触すると、金属間の電位差によって電位の低い(卑な)方の金属が腐食する現象です。
◇発生例
ステンレス鋼ボルトと塗装鋼板の組み合わせ: 鋼板側が腐食する
アルミリベットと鋼板の組み合わせ: アルミリベット側が腐食する
◇対策
電気的絶縁: 最も基本的な対策は、金属同士が直接接触しないように電気的に絶縁することです。例えば、樹脂ワッシャーを挿入することで、金属間の電流の流れを遮断できます。ただし、樹脂の弾性により結合力が弱まる可能性があるため、設計上の制約となることもあります。
貴な金属の活用と表面積比の最適化: 締結したい部材よりも電気的に貴な金属(例:ボルト、リベット)を使用し、その表面積を接合部材の面積に対して圧倒的に小さくすることが有効です。これは「小さなカソードと大きなアノード」という組み合わせになり、腐食する側の腐食進行を抑制し、腐食電流密度を極めて微小にする効果があります。
全体塗装と水分の停滞防止: 締結後に製品全体を塗装したり、接合部に水が長時間停滞しないような環境を設計することも有効です。水中における溶存酸素が減少すると電気抵抗が高まるため、腐食電流が流れにくくなります。これらの対策は、全ての異種金属の組み合わせにおける接触腐食に共通する原理に基づいています。
スキマ腐食(酸素濃淡電池による腐食)
次に注意すべきはスキマ腐食です。これは「酸素濃淡電池による腐食」とも呼ばれ、接合部の微細な隙間に水分が停滞することで、溶存酸素の濃度差が生じ、その結果として腐食が発生する現象です。
◇発生メカニズム
酸素が不足する隙間内部がアノード(酸化反応が起きる側)となり、酸素が十分に存在する隙間外部がカソード(還元反応が起きる側)となることで、金属の酸化が進みます。特に、不働態被膜によって耐食性を発揮する金属(ステンレス鋼など)が起こしやすい特徴があります。自然界に存在する塩素イオンは、この不働態被膜を破壊し、腐食をさらに活性化させる要因となります。
スキマ腐食を起こしにくい金属
金、プラチナなどの貴金属、また銅や亜鉛はスキマ腐食を起こしません。
◇対策
◇対策
構造設計: 隙間を作らないような構造設計が重要です。もしくは、隙間内の水分が常に入れ替わり、溶存酸素が十分に供給されるような状況を作り出すことも有効です。
材料選定: SUS316やモリブデンが添加されたステンレス鋼、チタンなど、耐スキマ腐食性に優れた材料を選定することも効果的な対策となります。
その他の腐食現象
応力腐食割れ
結合部に残る加工残留応力や使用環境での静的引張応力によって、腐食と機械的破壊が複合的に発生する現象です。オーステナイト系ステンレス鋼(JIS鋼種名で300番台シリーズ)や黄銅で発生しやすいことが知られています。
粒界腐食
溶接部近傍の金属結晶粒界部に析出物が生成されることで、その部分から腐食と機械的破壊が複合的に発生する現象です。
これらの腐食現象は、適切な材料選定と接合方法によって防止が可能です。
まとめ
異種金属を組み合わせた製品設計における腐食問題は、製品の信頼性や寿命に直結する重要な課題です。しかし、ご紹介した「異種金属接触腐食」や「スキマ腐食」、その他の腐食現象に対する適切な材料選定と構造設計を行うことで、これらの問題は十分に解決可能です。
製品設計において、腐食対策は常に頭を悩ませるポイントの一つですよね。今回の情報が、皆さんの設計の一助となれば幸いです。
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材料選定: SUS316やモリブデンが添加されたステンレス鋼、チタンなど、耐スキマ腐食性に優れた材料を選定することも効果的な対策となります。
その他の腐食現象
応力腐食割れ
結合部に残る加工残留応力や使用環境での静的引張応力によって、腐食と機械的破壊が複合的に発生する現象です。オーステナイト系ステンレス鋼(JIS鋼種名で300番台シリーズ)や黄銅で発生しやすいことが知られています。
粒界腐食
溶接部近傍の金属結晶粒界部に析出物が生成されることで、その部分から腐食と機械的破壊が複合的に発生する現象です。
これらの腐食現象は、適切な材料選定と接合方法によって防止が可能です。
まとめ
異種金属を組み合わせた製品設計における腐食問題は、製品の信頼性や寿命に直結する重要な課題です。しかし、ご紹介した「異種金属接触腐食」や「スキマ腐食」、その他の腐食現象に対する適切な材料選定と構造設計を行うことで、これらの問題は十分に解決可能です。
製品設計において、腐食対策は常に頭を悩ませるポイントの一つですよね。今回の情報が、皆さんの設計の一助となれば幸いです。
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