技術ブログ 金属材料別・発錆条件と対策:技術者のための実践ガイド
こんにちは!キョーワハーツの坂本留実です。
技術ブログを開いてくださりありがとうございます!
金属部品の信頼性を左右する「錆」。
今回は、主要な金属材料における発錆条件と、それを防ぐための実践的な対策を解説します!
各種金属材料の発錆特性
銅: 二酸化炭素、亜硫酸ガス、水、酸素、炭酸、塩酸、硝酸といった多様な環境で腐食しやすい性質を持ちます。
黄銅 (C1020, C2100, C2600): 耐食性は銅に劣り、アンモニア、水、酸素、炭酸ガスに弱いです。特に「応力腐食割れ(時期割れ)」のリスクがあります。
リン青銅 (C5210, C5240): 銅や黄銅よりも耐食性に優れます。耐酸性には劣りますが、アルカリには強い特性を持ちます。
ベリリウム銅 (C1700, C1720): 銅合金中で最も高い耐食性を誇りますが、基本的な腐食メカニズムは銅と同様です。
洋白 (C7701): 黄銅、リン青銅と同程度の耐食性であり、応力腐食割れを起こす可能性があります。
ステンレス (SUS430, SUS301, SUS304):
BA仕上げ材は大気中での耐食性に優れますが、指紋や油分、水分には注意が必要です。
2B仕上げ材は指紋が付着すると除去が困難になる特性があります。
バネ材など加工後に熱処理されたものは、水分による錆に注意が必要です。
銀メッキ: 硫黄や硫化物により黒錆が発生しやすいですが、水や酸素には比較的強いです。
ニッケルメッキ: 酸化性雰囲気下では徐々に腐食しますが、一般的な環境下では高い耐食性を示します。
クロムメッキ: 非常に安定しており、錆びることはありません。
錆を誘発する条件と対策
以下の条件や環境は金属材料の錆を誘発する主な要因となります。
保管中の結露: 湿度と温度変化の組み合わせは結露を生み出し、錆のリスクを高めます。対策: 湿度管理された環境での保管、緩やかな温度変化を維持することが重要です。目安として、湿度50%以上で-10℃以上の温度差がある場合は特に注意が必要です。
手で触れる: 手に付着した塩化物や硫化物などの成分は、特に銅合金や銀メッキの腐食を促進します。対策: 直接手で触れないよう、手袋やピンセットを使用するなどの対策を徹底してください。
潤滑油の付着: 一般的な潤滑油には硫化物が含まれており、銅や銀を腐食させる可能性があります。特に銀メッキ部品においては、プレス後の潤滑油の長期付着は厳禁です。対策: 防錆油や揮発性の高い油を使用するか、速やかに脱脂処理を行うことが重要です。
トリクレン蒸気脱脂後の急激な温度変化: 脱脂後の急激な温度低下は結露を招き、錆の原因となります。対策: 脱脂後は緩やかに冷却するか、液中浸漬による脱脂を検討してください。トリクレンは比熱が低いため、急激な温度変化に注意が必要です。