インドネシアは1990年台に急激に成長し、各地に工業団地が出来始め、外資系企業が本格的に進出し始めました。
 
それ以前は日立造船などの造船関係の日系企業がシンガポールと共同でインドネシアのバタム島に工業団地を構築中でした。
 
ここに工場を建てるとシンガポールから船で一時間程度で行くことが出来るので、交通の便の良い工業地帯にしようとしていました。その頃は隣国のシンガポールに行けば日系鉄鋼コイルセンターが多数稼働していたのでインドネシアにシンガポールから輸入あるいは、日本・台湾から輸入していました。
 
インドネシアでは日本のオードバイメーカーが進出し日系自動車部品メーカーも少ないながらも進出していました。日系自動車用ガスケットメーカーが本格生産しており何度か訪問しました。
 
このころのインドネシアは主にアメリカ向けの琺瑯鍋・キッチン用品・ナイフ・包丁・琺瑯西洋式風呂、トイレ、シャワー用品、など家庭用品、台所用品に大量に日本製のステンレスを使用していました。
 
アメリカの大手スーパーマーケット(WaymartTargetなど)、や日曜大工用品店(Home Depot,Lowesなど)のブランドの製品をO.E.M.で作っていました。
 
「当時のドイツやフランスなどのヨーロッパ製のステンレスは羽布で磨くと点状の欠陥が発生することが頻繁に発生する。しかし日本製は殆ど発生せず綺麗に磨ける」と評判でした。
 
この現象はかつては日本でも羽布研磨屋さんから苦情を受けた時代がありました。原因は微細な塊状の硬い非金属介在物(硬いCa系介在物が多い、軟らかいMn系ではない)が表層部に存在し、これが羽布研磨時に小さなピットとなって出現し、表面全体に点状の欠陥が現れ、均一な綺麗な肌にならない現象です。
 
今ではステンレス鋼の製鋼技術の進歩によってこのような微細塊状介在物は殆ど精錬過程で除去され大変少なくなっています。製鋼時の非金属介在物除去技術及び鋳造時の溶湯の電磁誘導撹拌技術などの進歩によって解決された問題です。
 
当時、インドネシアのお客さんは欧州の鉄鋼メーカーに文句を言うと特注品としてBuffing Quality と言って注文すればこのような現象は無い。と言い切っており標準品はこんなんもんだと取り合ってくれなかったそうです。
 
すなわち材料メーカーは発生原因を知っており対策工程は価格アップのオプションになるという訳です。
 
今日でも海外の安価なステンレスでは同様の羽布研磨時のトラブルが起こる場合が有ります。海外の安価なステンレスを使うときは羽布研磨を避けた方がいいかもしれません。琺瑯の技術は日本の琺瑯鍋メーカーが日本国内の工場を閉鎖し高齢の従業員ごとインドネシアに進出してきていました。
 
日本風赤提灯の飲み屋、ラーメン屋、そばやなどが少なからずありました。
 
尚、国内で琺瑯鍋の生産を止めた琺瑯メーカーはその後電子部品基板メーカーに転身した企業も有ります。因みに琺瑯鍋の製造について日本で知っていましたので興味無いですが、欧米向けの琺瑯仕上げの風呂桶の製造は興味深かったです。
 
数千トンのプレスで鉄板を風呂桶状に絞り、ガラス質の塗料をスプレーガンで厚塗りして焼き付け乾燥させていました。本来ベースは鋳物だったそうです。それとベースをF.R.P.で作り樹脂の塗料を同様に厚塗りした疑似琺瑯風呂。
 
あるいはF.R.P.にタイルを張り付けて製造したものもありました。
 
こちらの方が形状の自由度が有り大型のものもありました。(次回につづく)
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